徹底解説|パワハラ防止法とは何ですか? ―ハラスメント診断のご紹介―
近年、職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラ)が深刻な社会問題となっています。厚生労働省の調査によれば、約3人に1人がパワハラを経験していると報告されており、この状況に対応するため、2019年に「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が制定されました。本法律は、すべての労働者が安心して働ける職場環境の実現を目指しています。
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「パワハラ防止法」とは何ですか?
「パワハラ防止法」とは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)の通称です。
パワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が、企業にはじめて義務付けられたことで、パワハラ防止法と呼ばれるようになりました。
経営者・労働者を問わずパワーハラスメントにおける知識を深め、防止に努めることが義務化されました。
これにより、パワーハラスメントが社会的に「減ること」が期待されています。
パワハラ防止法に定められた義務について
パワハラ防止法は、パワハラの基準を法律で定めることで、具体的な防止措置を企業に義務化することを目的に作られました。厚生労働省が告示した「職場におけるハラスメント関係指針」には、具体的なパワハラの防止措置として次の3つが記されています。
- 企業の「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者への周知、啓発を行うこと
- 労働者からの苦情を含む相談に応じ、適切な対策を講じるために必要な体制を整備すること
- 職場におけるパワハラの相談を受けた場合、事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処を行うこと
パワハラ防止法が求められる理由
平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査 主要点資料によると、従業員向けの相談窓口で従業員から相談の多いテーマは、パワーハラスメント(32.4%)が最も多いという結果となりました。過去3年間に1件以上パワーハラスメントに該当する相談を受けたと回答した企業は、 36.3%あり、過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがあると回答した従業員は、32.5% とのこと。ハラスメント対策が急務であり、注目されていることがよくわかるデータです。
平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査 主要点
パワハラ防止法の罰則について
パワハラ防止法には直接的な罰金規定や刑事罰は設けられていませんが、企業が防止措置義務を怠った場合、厚生労働大臣による助言・指導、さらには勧告といった行政措置の対象となります。特に、勧告に従わない場合は、労働施策総合推進法33条2項に基づく措置が行われる可能性があることに注意が必要です。
また、企業は行政による企業名の公表や社会的信用の低下、労働者からの損害賠償請求、人材採用への悪影響など、様々なリスクに直面する可能性があります。このようなリスクは、企業の持続的な成長や発展に大きな障害となる可能性があります。
これらのリスクを回避するためには、適切な防止措置の実施や社内の相談体制の整備、定期的なパワハラ防止研修の実施、内部管理体制の強化といった積極的な取り組みが不可欠です。直接的な罰則規定は設けられていないものの、企業は自主的かつ継続的な防止措置を講じることで、健全な職場環境の整備と企業価値の向上を図ることが重要といえます。
テーマ | 詳細 |
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直接的な罰則について | パワハラ防止法には直接的な罰金や刑事罰はありませんが、企業が防止措置義務を怠ると厚生労働大臣による助言・指導を受ける可能性があります。 改善が見られない場合には勧告が行われ、さらに従わない場合には労働施策総合推進法33条2項に基づく措置が取られる可能性があります。 |
企業が直面する具体的なリスク | パワハラ防止法の義務違反により、企業は行政による企業名の公表を受け、社会的信用やイメージが低下するリスクがあります。 また、労働者からの損害賠償請求や人材採用への悪影響も懸念されます。 |
リスク回避のための必要な対応 | 企業は、パワハラ防止法に基づき、適切な防止措置を実施することが求められます。 これには、社内の相談体制の整備や、定期的なパワハラ防止研修の実施、さらに内部管理体制の強化が含まれます。 これにより、パワハラの発生を未然に防ぎ、職場環境を改善することができます。 |
このように、直接的な罰則規定はないものの、企業は様々なリスクを考慮し、積極的な防止措置を講じる必要があります。
職場のパワーハラスメント 3つの判断基準とは
ハラスメントと認定する際、「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」と定義されています。
以下、3つの要素を全て満たすものが、パワハラとみなされます。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの(精神的・身体的苦痛を与える言動)
対象は「全労働者」
正規雇用労働者のみならず、契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなど全ての雇用形態の人が該当します。なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントにはあたりません。
法で定められたパワハラ6類型
具体的には、以下の6つの類型に分類されます。
厚生労働省は「職場のパワーハラスメント」を6つに分類し、典型例を示しています。
身体的な攻撃 | 暴行・傷害・殴る蹴る・物で頭を叩く・物を投げつける、など |
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精神的な攻撃 | 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言・人格を否定する暴言を吐く・ 他の従業員の前で罵倒する・長時間にわたって執拗に非難する、など |
人間関係からの切り離し | 隔離・仲間外し・無視・別室に隔離する・集団で無視する・ 他の従業員との接触や協力を禁止する、など |
過大な要求 | 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害・ 新人に対して教育のないまま過大なノルマを課す・私的な雑用を強要する・ 終業間際に大量の業務を押し付ける、など |
過小な要求 | 業務上の合理性なく・能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること 仕事を与えないこと・役職名に見合わない程度の低い業務をさせる・ 嫌がらせで仕事を与えない、など |
個の侵害 | 私的なことに過度に立ち入ること・個人用の携帯電話をのぞき見る・ センシティブな個人情報を他の労働者へ暴露する・ 家族や恋人のことを根掘り葉掘り聞く。 |
企業に課せられる義務
事業主には以下の対応が法律で義務付けられています。
それぞれの義務について、具体的な実施方法と重要なポイントを解説します:
1. パワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
具体的な実施内容:
- 就業規則への明確な規定の追加
- パワハラの定義
- 禁止される具体的な言動
- 違反時の懲戒処分の内容
- 経営トップによる宣言の発信
- パワハラ防止に関する経営方針の表明
- 具体的な取り組み施策の提示
- 定期的な社内教育の実施
- 年1回以上の全従業員向け研修
- 管理職向けの特別研修
- eラーニングの活用
実施における注意点:
- 方針は具体的で分かりやすい表現を使用
- 正社員だけでなく、派遣社員や契約社員も対象に含める
- 多言語での周知(外国人従業員がいる場合)
2. 相談窓口の設置と適切な運用
設置の具体的要件:
- 社内・社外の両方の窓口を設置
- 社内:人事部門や専門の相談室
- 社外:専門の相談機関への委託
- 複数の相談ルートの確保
- 電話、メール、面談など
- 上司、人事部門、専門相談員など
運用のポイント:
- 相談窓口担当者の育成
- カウンセリングスキルの習得
- 法的知識の習得
- 24時間対応可能な体制の整備
- 記録の適切な保管体制の構築
3. 事後の迅速かつ適切な対応
対応手順の確立:
- 事実関係の迅速な調査
- 公平・中立な調査体制
- 客観的証拠の収集
- 被害者保護の即時実施
- 加害者との接触回避措置
- メンタルヘルスケアの提供
- 加害者への対応
- 適切な処分の決定
- 再発防止研修の実施
注意すべき点:
- 調査から対応までの期限設定
- 対応状況の進捗管理
- 再発防止策の策定と実施
4. 相談者や行為者のプライバシー保護
具体的な保護措置:
- 情報管理の徹底
- アクセス権限の制限
- 書類の施錠管理
- 関係者への守秘義務の徹底
- 秘密保持に関する誓約書の取得
- 違反時の罰則規定の整備
- 相談記録の適切な管理
- 保管期間の設定
- 廃棄手順の明確化
実施のポイント:
- デジタルデータの暗号化
- 相談室の防音対策
- 面談時の配慮(時間帯、場所の選定)
5. 相談したことを理由とする不利益取り扱いの禁止
禁止される不利益取り扱いの例:
- 解雇、契約更新拒否
- 降格、減給
- 配置転換
- 昇進・昇給の見送り
- 研修機会の制限
防止のための体制整備:
- 人事評価システムの透明化
- 評価基準の明確化
- 第三者チェック体制の導入
- モニタリング体制の構築
- 定期的な労働条件の確認
- 相談者のフォローアップ面談
- 報復行為への厳正な対処
- 懲戒規定の整備
- 監査体制の確立
追加的な推奨事項
予防的措置:
- 職場環境のモニタリング
- 定期的なストレスチェック
- 従業員満足度調査の実施
- コミュニケーション活性化施策
- 定期的な面談制度
- チームビルディング活動
- 管理職の育成
- リーダーシップ研修
- コーチング研修
これらの義務を確実に履行することは、法令遵守の観点だけでなく、健全な職場環境の構築と企業の持続的な発展にとって極めて重要です。特に、形式的な対応にとどまらず、実効性のある取り組みとして実施することが求められています。
パワハラ診断(厚生労働省より)
パワハラ対策についての総合サイト「あかるい職場応援団」(厚生労働省)にて、
立場に合わせたパワハラの種類をチェックできます。ぜひ、チェックしてみてください!
一見すると企業側の負担が増加しているように見えますが、パワハラ防止法は企業にも大きなメリットになる法律です。曖昧だったパワハラが法律で定義されることで、トラブルの回避や、パワハラ行為が起こった場合の対処も行いやすくなります。
パワハラ防止法の施行に間に合うように、早めに準備を始め、働きやすく、風通しのいい社内環境の整えに取り組んでみてください。
パワハラ防止法に対応研修
ガイアシステムでは、パワハラ対策における、セミナー・研修を実施しております。
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