増加する介護現場のカスハラ|実際の事例と職員保護のための具体策を紹介

介護現場では、利用者やその家族からのハラスメント行為、いわゆる「カスハラ」が深刻な問題となっています。身体的暴力、精神的暴力、セクシャルハラスメントなど、さまざまな形で発生するカスハラは、介護スタッフの心身に大きな負担を与え、離職の要因にもなっています。

 

本記事では、介護施設で実際に起きているカスハラの実態を具体例とともに解説します。また、カスハラ発生の背景にある要因を探り、介護スタッフを守るための防止策と対応方法を詳しく紹介します。

カスハラ防止に向けては、厚生労働省や自治体による支援策、介護報酬改定での評価など、政府レベルでの取り組みが進んでおり、介護事業者団体も、研修資料の提供や好事例の共有を通じて、会員事業者のカスハラ対策を後押ししています。

介護施設では、カスハラ防止方針の策定と職員への周知徹底、スタッフ向け研修の実施、利用者・家族への説明と同意書の取得、相談窓口の設置と外部機関との連携など、多角的な対策が求められます。利用者と介護スタッフの双方の立場に立った丁寧な対応を心がけることが、カスハラのない安心・安全な介護環境の実現につながるでしょう。

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介護現場におけるカスタマーハラスメントの実態

介護現場におけるカスタマーハラスメントの実態

介護現場では、利用者やその家族から介護スタッフに対するハラスメント行為、いわゆる「カスハラ」が近年、増加傾向にあり非常に深刻な問題となっています。カスハラは介護スタッフの心身に大きな負担を与え、離職につながるケースも少なくありません。

ここでは、カスハラの定義と種類、介護施設で実際に発生しているカスハラの具体例、そしてカスハラがスタッフに与える影響と離職との関連性について詳しく解説します。

カスハラの定義と種類

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先など、業務上関わる外部の人から受ける嫌がらせや迷惑行為のことを指します。介護現場では、利用者やその家族から介護スタッフに対して行われるハラスメントを特にカスハラと呼んでいます。

カスハラは大きく分けて、身体的暴力、精神的暴力、セクシャルハラスメントの3種類があります。身体的暴力は、殴る、蹴る、つねるなどの行為が該当します。精神的暴力は、大声で怒鳴る、人格を否定する、脅迫するなどの行為を指します。セクシャルハラスメントは、性的な言動や身体的接触を含みます。

介護施設で発生するカスハラの具体例

介護施設では、さまざまなカスハラ行為が報告されています。以下は、実際に発生したカスハラの具体例です。

  • 利用者が介護スタッフの腕をつかんで引っ張り、怪我をさせた
  • 家族が介護スタッフに対して「無能だ」「役立たず」などと罵倒した
  • 認知症の利用者が、介護スタッフの胸を触ろうとした
  • 家族が「もっとしっかり介護しろ」と言って、介護スタッフを脅した

これらのカスハラ行為は、利用者の感情的ストレスや認知症の進行、コミュニケーションのすれ違いなどが原因で発生することが多いとされています。特に認知症による行動は、医療的対応が必要な場合もあるため、適切な理解と対策が求められます。

カスハラがスタッフに与える影響と離職との関連

カスハラは、介護スタッフの心身に深刻な影響を与えます。身体的暴力により怪我を負ったり、精神的暴力によってストレスや不安を抱えたりするケースが少なくありません。長期的にカスハラにさらされることで、バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥るスタッフもいます。

こうした状況は、介護スタッフの離職にもつながっています。公益財団法人介護労働安定センターが行った調査では、介護職員の約4割が「利用者からの暴言・暴力」を離職の理由に挙げています。カスハラ対策は、介護スタッフの心身の健康を守るだけでなく、人材の定着と質の高いケアの提供にも不可欠なのです。

介護施設では、カスハラ防止に向けた取り組みが急務となっています。職員保護のために、ハラスメント防止方針の策定、スタッフへの研修、利用者への説明、相談窓口の設置など、多角的な対策を講じることが求められています。利用者と職員双方の信頼関係を築きながら、安心して働ける環境を整備していく必要があるでしょう。

カスタマーハラスメント発生の背景と要因

介護現場で発生するカスタマーハラスメント(カスハラ)は、介護スタッフの心身に深刻な影響を及ぼし、離職の要因となっています。カスハラを防止し、職員を保護するためには、その背景にある要因を理解することが不可欠です。

ここでは、カスハラ発生の主な要因として、以下3つに着目し、それぞれの要因がカスハラにつながるメカニズムを解説します。

  • 利用者・家族の感情的ストレスとコミュニケーションの問題
  • 認知症の進行に伴う行動障害
  • 介護サービスに対する認識のギャップ

利用者・家族の感情的ストレスとコミュニケーションの問題

介護を必要とする状況は、利用者本人だけでなく、家族にとっても大きなストレス要因となります。身体的・精神的な変化への不安、経済的負担、家族関係の変化などが複合的に作用し、感情的な不安定さを引き起こすことがあります。

こうしたストレス状態にある利用者や家族は、適切なコミュニケーションが取りづらくなり、介護スタッフとの間で誤解や対立が生じやすくなります。感情的な言動や、過度な要求、暴言などのカスハラにつながるケースが少なくありません。介護スタッフは、利用者・家族の心情を理解しつつ、冷静かつ丁寧なコミュニケーションを心がける必要があります。

認知症の進行に伴う行動障害とカスハラの関係

認知症の進行に伴い、記憶障害、見当識障害、判断力の低下などが生じます。これらの症状は、時として、興奮、暴力、徘徊、不潔行為などの行動障害として表れ、介護スタッフへのカスハラにつながることがあります。

認知症による行動障害は、利用者本人の意思とは必ずしも一致しないため、介護スタッフは行動の背景にある原因を見極め、適切な対応を取ることが重要です。行動障害の悪化を防ぐためには、医療的なアプローチと、ケアの工夫を組み合わせた多角的な対策が必要となります。

また、認知症の特性や対応方法について、家族への丁寧な説明を行うことも欠かせません。認知症ケアの難しさを共有し、理解を得ることで、家族からのカスハラを未然に防ぐことにもつながります。

介護サービスに対する認識のギャップ

利用者・家族と介護事業者の間で、提供される介護サービスの内容や範囲について認識のギャップが生じることがあります。過度な要求や、サービス内容への不満が、カスハラの原因となるケースも少なくありません。

こうしたギャップを解消するためには、サービス開始前の十分な説明と合意形成が不可欠です。重要事項説明書等を活用し、提供されるサービスの内容や範囲、料金体系などについて、具体的かつ分かりやすく説明することが求められます。

また、サービス提供中も、利用者・家族との定期的なコミュニケーションを通じて、ニーズの変化や不満の有無を確認し、柔軟に対応していくことが重要です。認識のギャップを放置することなく、早期に解消する努力を怠ってはなりません。

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介護施設におけるカスハラ防止策と対応方法

介護施設におけるカスハラ防止策と対応方法

ここでは、介護施設における、職員保護に欠かせないカスハラ防止策と具体的な対応方法について解説していきます。

カスハラ防止方針の策定と職員への周知徹底

カスハラ防止の第一歩は、明確な方針を策定し、全職員に周知徹底することです。方針には、カスハラの定義、防止に向けた組織の姿勢、具体的な対応手順などを盛り込みます。

策定した方針は、職員会議や研修等で繰り返し説明し、全員が理解・実践できるようにしましょう。また、方針を文書化し、いつでも確認できるようにすることも重要です。

防止方針の策定にあたっては、以下の点に留意してください。

  • カスハラの具体例を示し、認識を共有する
  • ゼロトレランスの姿勢を明確にする
  • 職員の安全確保を最優先とする
  • 報告・相談体制を整備する

スタッフ向け研修の実施とロールプレイングの活用

カスハラ防止には、スタッフの理解と適切な対応スキルが不可欠です。定期的な研修を実施し、カスハラの背景にある要因や対応方法を学ぶ機会を設けましょう。

研修では、認知症による行動心理症状(BPSD)への理解を深めることも重要です。BPSDが原因となるカスハラもあるため、医療的知識を身につけ、適切なケアを提供できるようにします。

さらに、ロールプレイングを活用し、実際の場面を想定した演習を行うことをおすすめします。具体的な言動を交えながら対応を練習することで、スタッフの実践的なスキルを高めることができます。ロールプレイングの例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 暴言を吐く利用者への対応
  • 過度な要求をする家族への説明
  • セクハラ発言への毅然とした態度
  • 他のスタッフへの協力要請

従業員をクレーマーから守り、組織の対応力向上を目指す

カスタマーハラスメント研修対応力強化

従業員に大きなストレスを与え、離職の原因にもなっているカスタマーハラスメント。個人の能力では解決できないケースも多く、組織が一体となってリスク回避することが必要です。

本研修はカスタマーハラスメントの理解と対応力を強化することを目的に、コミュニケーションスキルを学び、実践的なグループワークを通じて具体的な対策を考えます。

利用者・家族への説明と同意書の取得

利用者やその家族に対しても、カスハラ防止に向けた施設の方針を明確に説明しておくことが大切です。サービス利用開始時や契約更新時に、重要事項説明書等でカスハラが許されない行為であることを伝えましょう。

また、あらかじめ同意書を取得しておくことで、カスハラ発生時の対応がスムーズになります。同意書には、以下のような内容を盛り込むとよいでしょう。

  • カスハラの具体例を示し、認識を共有する
  • ゼロトレランスの姿勢を明確にする
  • 職員の安全確保を最優先とする
  • 報告・相談体制を整備する

説明の際は、利用者や家族の立場に立って、丁寧かつ誠実に対応することを心がけてください。
カスハラ防止は、信頼関係の構築なくしては成り立ちません。

相談窓口の設置と外部機関との連携

日常的なコミュニケーションに加えて、職員が安心して相談できる窓口を設置することも大切です。上司や同僚に相談しにくい場合もあるため、第三者機関の活用も検討しましょう。

外部の専門家から助言を得ることで、より適切な対応策を見出すことができます。例えば、以下のような機関との連携が考えられます。

  • 地域の医療機関(認知症疾患医療センターなど)
  • 福祉・介護関連団体
  • 法律専門家(弁護士など)
  • 労働相談機関

外部機関との連携によって、適切な医療的ケアや法的対応を図ることができます。日頃から関係機関とのネットワークを構築し、いざという時に備えておくことが重要です。

まとめ

介護現場で発生するカスタマーハラスメント(カスハラ)は、利用者やその家族から介護スタッフに向けられる身体的・精神的暴力やセクシャルハラスメントです。これらのハラスメントは、介護スタッフの心身に深刻な影響を与え、離職の要因にもなっています。

カスハラの背景には、利用者・家族の感情的ストレスやコミュニケーションの問題、認知症の進行に伴う行動障害、介護サービスに対する認識のギャップなどの要因があります。これらの要因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

介護施設では、カスハラ防止方針の策定と職員への周知徹底、スタッフ向け研修の実施とロールプレイングの活用、利用者・家族への説明と同意書の取得、相談窓口の設置と外部機関との連携などの対策が求められます。

利用者と介護スタッフの双方の立場に立った丁寧な対応を心がけることが、カスハラのない安心・安全な介護環境の実現につながります。介護現場の職場環境改善に向けて、関係者が一丸となって取り組んでいくことが重要です。

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「グレーゾーンと思われがちな事例紹介」やケーススタディを通じてハラスメントの識別方法を習得し、グループディスカッションで防止策を考案します。また、ハラスメントが起きた際の適切な対応方法や報告手順を身に着けます。

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