リスクマネジメント研修とは?考え方やプロセス、効果的な対処法を解説
企業が経営を行う中で、「リスクマネジメント」は欠かせません。リスクマネジメントを軽視してしまったが故に失ってしまった社会的信用は、簡単に取り戻せるものではなく倒産などに至る可能性もあります。さらに近年では、個人情報の漏洩や紛失などの事件が目立っており、ネットワークが発展しているからこそ必要なリスクマネジメントがあります。本記事ではリスクマネジメントに関する基本的な考え方や企業として企画・実施するべき研修とはどのようなものかを解説します。
「研修の内容が数年前から変わっていない」「時代にあったリスクマネジメント研修を行いたい」という担当者の方をはじめとして、多くの方に役立つ内容です!
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企業におけるリスクとは
まずは、「リスクマネジメント」を知る前にリスクそのものについて理解しておきましょう。
具体的にどのようなリスクがあるのかを知ることで、そのリスクをどのように「マネジメント」すれば良いのかを考えることができます。
「外部要因」と「内部要因」
近年、企業に関わるリスクとしては「コンプライアンス違反」や「個人情報の漏洩・管理」などの問題が多くみられます。主なリスクには、自社でコントロールすることができない「外部要因」とコントロールすることができる「内部要因」があります。ここでは、この二つの要因について解説します。
外部要因について
外部要因は、基本的に自社によるコントロールができません。例えば、社会の変化や法改正、テクノロジーの進化、自然災害などがありますが、近年では新型コロナウイルスの感染拡大が多くの企業にとってリスクとなりました。また、日本では災害が増えてきていますが、台風や地震などによって通信インフラがダメージを受けてしまうことで、業務ができなくなってしまうことも外部要因です。
内部要因について
内部要因は、自社によるコントロールができる要因です。つまり、事前の対策や改善が可能となります。例えば、財務やコンプライアンス、個人情報管理、オペレーション、企業戦略などは対策を考えればリスクを防ぐことができます。リスクマネジメントは、これらの内部要因に対して行うものと考えて問題ありません。
企業を取り巻くリスクについて
また、企業を取り巻くリスクとしては、次のようなものが挙げられます。
法的 リスク | 法的リスクには、従業員の不正行為、脱税、粉飾決算などが挙げられます。 法的リスクでは、人的要因があるため社内の混乱やダメージなどを考慮した対策が必要になります。 |
金融 リスク | 金融リスクは、為替相場の変動や現預金等の管理ミスなどが考えられます。 為替相場の変動についてはコントロールが難しいと考えられますが、 預金などの管理ミスについては未然に防ぐことができますので、 事前のマネジメントを心がけましょう。 |
環境 リスク | 環境リスクとは、自社の製品などが環境汚染など社会的に悪影響を与えてしまうものです。 近年は事前の研究や調査などで事前に防いでいるケースがほとんどですが、 こういったリスクも可能性はゼロと言えません。 |
情報 リスク | 近年、個人情報漏洩や紛失、SNSで発信してしまうなどのリスクが増えています。 また、USBの紛失やハッキングなどによって企業が管理する個人情報が紛失してしまったり 流出してしまうなどの事件も多いため、こういったリスクに対する対策も十分に講じる必要があります。 |
リスクマネジメントとは
では、次に「リスクマネジメントとは何か」を解説します。
リスクマネジメントを理解しておくことで、自社にあった研修の企画やカリキュラム構成に役立ちます。
リスクマネジメントとは、「リスクを組織的に管理し、損失等の回避や低減を図るプロセス」です。リスクマネジメントを行うことで、企業や組織が自分たちの価値を維持・増大していくに当たってハードルとなるリスクやそのリスクによる影響を正確に把握することができます。その結果として、リスクのマイナス面を抑えつつ、リターン(収益)の最大化を追求することができるのです。
リスクマネジメントの目的と必要性について
近年、社会環境の複雑化や将来の予測が困難な時代であることから、VUCA(ブーカ)と言われることが当たり前のようになりました。VUCAの時代では、事前にリスクを予測してそれに対する策を講じることがリスクマネジメントの一般的な流れでしたが、最近では事前の予測が難しいことから「何かが起こった時にいかに素早く対応できるか」が重要視されています。スピーディかつ企業としての社会的信用を失うことのないようなリスクマネジメントこそ、これからの時代に必要なものなのです。
リスクマネジメント研修においては、「リスクマネジメント」を正しく理解し、それぞれが自分のできることややるべきことを考え、行動できるような考え方やスキルを身につけることが求められています。
リスクマネジメントとその他の違い
リスクマネジメントを学ぶ中で、「リスクヘッジ」、「リスクテイク」、「リスクアセスメント」といった似たような言葉との違いを理解しておくことも必要です。
ここからは、リスクマネジメントとそれぞれの言葉の違いについて解説します。
リスクヘッジとの違い
リスクマネジメントは、「リスクを管理する」ということです。そのため、企業や組織全体に、将来的に起こるかもしれないリスクに対しての対策を講じるものです。それに対して、リスクヘッジは防止策の立案や実施のみ行うものです。つまり、リスクヘッジとはリスクマネジメントの一部ということが言えます。
リスクテイクとの違い
「リスクテイク」とは、”危険の可能性”を受け入れて行動することです。現在、リスクを事前に予測して対策を立てることは難しいと言えます。そのため、ある程度のリスクを受け入れて行動することで、利益などのリターンが期待できます。「リスクヘッジ」と違い、リスクを回避せずリスクを伴う行動を取るという意味では、大きな違いがあります。
リスクアセスメントとの違い
リスクアセスメントとは、職場における危険性や有害性を調査し、その結果に基づいて対策を実行することです。また、従業員が安心して働ける環境を維持することにもつながるため、リスクアセスメントは実施する必要があります。
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リスクマネジメントの特徴・タイプ
リスクマネジメントは、企業や組織の事業目的に関連してリスク要因を発見し、リスクとして特定、対策を考えることが必要です。特に、対策としては「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」という区分に分けることができます。今回は、この二つの区分の手段や内容を解説します。
リスクコントロール
リスクコントロールは、「損失の発生頻度と大きさを削減する」ことを目的としており、その手段としては「回避」「損失防止」「損失削減」「分離・分散」があります。以下、それぞれについて内容を解説します。
回避 | 回避は、リスクを伴うことが考えられる活動自体を中止することで、 予想されるリスクを避けることです。 活動そのものがなくなるため、リターン(利益)を放棄しなければならなくなります。 |
損失防止 | 損失防止は、損失発生に関して予防措置を講じることで損失の発生頻度を減らします。 |
損失削減 | リスクは、完全に無くすことができません。 そのため、事故などが発生した際には損失の拡大を防止・軽減し、 損失規模を抑えることを最優先に考えます。 そのための対策が、損失削減です。 |
分離・分散 | リスクの源泉となるものを分離・分散させることで、 一箇所に集中してしまうことを避ける方法です。 |
リスクファイナンシング
リスクファイナンシングは、損失を補填するための金銭的な手当てであり、「移転」と、「保有」という二つの手段があります。
移転 | 移転は、保険などによって第三者に金銭的なリスクを移転することで損失補填を受ける方法です。 |
保有 | 保有は、資金の積立などによって損失を自己負担する方法です。 リスクが潜在的にあることを意識しながらも、対策を講じることはありません。 |
リスクマネジメントのプロセス
ここからは、リスクマネジメントのプロセスについて解説します。
リスクマネジメントの基礎や特徴などを理解したら、具体的にどういったプロセスを経てリスクマネジメントが行われるのかも把握しておきましょう。
そうすることで、自分たちの企業や組織でリスクマネジメントを行うことができます。
リスクの特定
プロセスの最初は、リスクの特定(発見)です。起こってしまったリスクの要因や想定できるものを、ブレインストーミングなどを活用して数多く抽出し、リストアップしていきます。こういったリスクの発見や特定は、できるだけ多くの従業員が参加することで幅広く・思いがけないリスクに気がつくこともあるため、できるだけ様々な部署の従業員が参加すること、そして、多面的にリスクの洗い出しを心がけましょう。
なお、リスクの発見や特定については「これは起こることがないだろう」と見逃されやすいようなリスクや本能的に避けてしまいそうなリスクを含め、感情に左右されず現実に向き合うことで丁寧に出していきましょう。リスクを特定する時点で「見て見ないフリ」や「気づかないふり」をしてしまうと重大なリスクを負うことになりかねません。
リスクの分析
できるだけ数多くのリスクを出すことができたら、それぞれのリスクに対して「影響の大きさ」や「発生確率」を特定することで、そのリスクがどれほど重大なものかを分析します。
リスクの分析については、できるだけ定量的に行うことが大切です。現実的には「影響の大きさ」や「発生確率」を定量的に把握することが難しいケースもありますが、数値化できない部分も従業員同士で議論をする中で相対的に比較することで、定量的に分析していくようにしましょう。
リスクの評価
リスクの分析ができたら、それぞれの分析結果を可視化することで評価を行います。可視化した後には、「影響が大きく」「発生確率が高い」リスクに着目するかもしれません。市などのし、実際には他のリスクに早期対応できるなら、そちらを優先的に対処すると良いでしょう。そのため、リスクの大きさだけでなく「どの順序で対応するのが良いのか」を意識して優先順位をつけていくようにすることが大切です。
対策の策定
リスクの特定、分析、評価ができたら、実際の対策方法を策定します。従業員が具体的に行動し、全体的に一つのゴールに向かって動くことができるような対策法を策定することを意識しましょう。
対策の実施
具体的な対策が策定できたら、実施していきます。なお、実施する中で改善すべきところが出てきた場合には、迅速に改善することを心がけましょう。
リスクマネジメントについて、PDCAサイクルを回しながらモニタリングと評価を行うと、より具体的な改善策を講じることができるようになります。
個人情報に関するトラブルが多発している
近年、個人情報漏洩などのトラブルが多発しています。各企業や組織がSNSを活用した広報を行う際に思いがけず漏洩してしまうこと、USBや情報の入った鞄などを紛失してしまうことなどのトラブルは、企業や組織の社会的信用を失うだけでなく、顧客一人ひとりに悪影響を与えかねません。リスクマネジメントにおいては、こういった情報漏洩への対策も必要になります。
ここからは、個人情報に関するリスクマネジメントについて解説します。
セキュリティポリシーの策定と浸透
個人情報に関するリスクを予防するに当たっては、「セキュリティポリシー」を策定することが重要です。セキュリティポリシーとは、従業員が「やって良いこと・いけないこと」などの行動を明確にするためのものです。企業のシステム利用については、思いがけないところからウイルスなどに侵入されてしまうことも考えられるため、従業員全体に根付かせるための研修をはじめとした工夫が必要になります。
情報管理に関する仕組みづくり
企業では、顧客情報をはじめとした様々な情報が日々やり取りされています。そのため、一つひとつの情報管理の徹底や必要のない情報(破棄する必要があるもの)の廃棄ルールなどをマニュアル化し、しっかりと管理するようにしましょう。
なお、情報漏洩や流出は外部よりも内部からのミスなどが多いようです。そのため、データの暗号化やパスワードを定期的に変更するなどの管理体制、また、業務上必要最低限の従業員がデータを扱えるようにするなどの仕組みづくりも必要です。
パソコンやタブレットなどのセキュリティについて
企業や組織では、パソコンやタブレットを使用する業務が多くあります。また、それらの機器で個人情報を管理することがほとんどであるため、情報機器の持ち出しや盗難を防止すること、FAXやメールなどの誤送信を防ぐ仕組みづくりを心がけましょう。
さらに、次のようなことにも注意しておきましょう。
ノートパソコンの管理
ノートパソコンなどの情報機器を社外に出す時には、管理職などが番号や持ち出し先などを把握しておくことなど、機器の動きを理解しておくようにしましょう。また、チェーンやロックをかけることを徹底し、盗難なども避けましょう。
パスワードは必ず設定、定期的に変更する
パソコンやタブレットには、必ずパスワードを設定しましょう。また、パスワードは社内の人間以外が知ることのないような管理体制を徹底することが大切です。
過去には、パソコンにテプラなどのシールでパスワードを貼っている…というようなこともありましたが、絶対に第三者に見られるようなことがあってはなりません。
盗難された場合の対策も事前に立案しておく
万が一、パソコンやタブレットが盗難されたとしても、通常の方法でアクセスができないような準備をしておきましょう。また、別の機器からロックがかけられるようにしておくことも重要です。
リスクが発生した後の対応を事前に準備しておく
情報漏洩や流出は、100%防ぐことを目的にマネジメントを行いますが、現実問題として漏洩や流出は起こってしまっています。
そのため、100%リスクを防ぐことができないという認識を持ち、リスクが発生してしまった場合を想定しておくことで被害を最小限に抑えられるようにしておきましょう。
例えば、リスク発生時の対応マニュアルを作成する、システムダウンや情報流出などの損害に備えた保険に加入しておくなどの準備が重要です。
企業としてリスクマネジメントができる体制を
今回は、企業・組織におけるリスクマネジメントや情報漏洩・流出対策について解説しました。リスクマネジメントに関する研修を行う際には、本記事で解説した内容や「個人情報保護法」の理解なども欠かせません。
ガイアシステムでは、リスクマネジメントに関する経験や知識を豊富に有するコンサルタントが、企業・組織の担当者様のニーズを丁寧に汲み取って研修の準備からアフターフォローまでをサポートします。自社の状況や時代の流れにあった研修カリキュラムを立案し実行することで、最適なリスクマネジメントを行いましょう。
豊富な研修プログラムをご用意しております。
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