管理会計と制度会計は何が違う?役割や違いを知って企業会計に強くなる
会計に関する業務に配属されたり、業務の配置転換で経理や財務に配属されると「管理会計」や「制度会計」という言葉を耳にすることがあります。しかし、それぞれの違いや目的は何か?と聞かれると、明確に答えられる方は少ないのではないでしょうか。
今回は、これから会計業務に関わる方や改めて「管理会計」と「制度会計」の目的や必要性、それぞれの違いなどを知りたい方を対象として、「管理会計」と「制度会計」について解説します。
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企業会計は「管理会計」と「制度会計」に分かれる
会計とは、会社や組織のお金を集計したり分析したりすることですが、前述した通り、企業における会計は「管理会計」と「制度会計」に分かれます。「管理会計」と「制度会計」は、簡単に言うと内部向けか外部向けかに分けることができますが、それぞれの会計は目的や役割が異なっており、どちらも会社にとって重要なものです。
まずは、それぞれの目的や役割などを理解することが大切です。また、制度会計については、作成の際の原則や関連する法律がありますので、それも理解しておきましょう。
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管理会計とは
まずは、「管理会計」について知りましょう。管理会計は、英語では「Management accoundting」と訳され、企業を「マネジメントする会計」と言えます。ここでは、その目的や必要性について解説します。
管理会計の目的と必要性
管理会計は、企業や組織が適切な事業を遂行するための会計であり、「内部報告会計」と呼ばれます。主に、企業内部の関係者が自分で使うためのものであり、自社の課題や問題を把握して対処するために用いられます。そのため、法律などによる定めがなく、記載方法やフォーマット、会計期間が自由に決められます。
管理会計の目的は、「自社の経営を管理すること」です。経営者は、この会計データによって自社の製品や人事に関して課題を見つけたときの施策、自社の経営状況を分析したり必要に応じて意思決定を行うための材料を揃え、企業の経営改善、業績の向上を目指します。そのため、管理会計は「未来志向の会計」と言われます。
管理会計のメリット
管理会計は、「義務」ではありません。あくまでも「内部」に向けたものであり、外部へ公表したり説明する必要はないのです。そのため、わざわざ作成する必要はありません。しかし、管理会計には多くのメリットがあります。
メリット① 目標や業績の管理ができる
管理会計は、自社の現状を理解することで、事前に立てた予算や目標と実績を比較して「適切かどうか」を管理することができます。また、課題を把握することから自社の強みや弱みを具体的に把握することができるため、より具体的で効果的な施策が行えます。
メリット② コスト管理がしやすくなる
管理会計によって予算と実績を把握・管理することができるようになると、適切なコスト削減が行えます。また、削減した分を必要なところに回すことができれば、業務改善にもつながるため、自社にとって適切なコスト管理がしやすくなると考えられます。
メリット③ 様々な評価が可能
管理会計は内部で自由な作成ができるため、企業単位だけでなく部署単位での目標立案や水準を合わせることができるため、部署が異なるとしても公正な評価が行えます。
メリット④ 今後の経営につながる
管理会計は、経営状態を数値化して整理することができるため、現状を明らかにするだけでなく改善点の発見につながります。また、財務諸表の作成などから未来の予測や提言のための目線やスキルが身に付きます。
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管理会計の業務
では、管理会計にはどのような業務があるのでしょうか。基本的には「原価管理」「予実管理」「資金繰り管理」「経営分析」の4つの要素があります。ただし、企業によって必要な情報を集めることになるため、細かな部分は自由にカスタマイズしましょう。
原価管理
原価計算は、利益を上げるために製品やサービスの原価を管理することです。原材料や部品のコスト計算、人件費、設備費などを算出したり、原価を正確に把握したりすることで、製品の価値や利益に見合った価格設定、損益や経営状況を把握したりすることができます。
原価管理によって、基準となる原価を設定できれば、製品完成時に実際に必要した原価を計算して、標準原価との違いを分析することで、どの工程・材料を抑えるかどうかの対策を立てやすくなるため、売値や利益の適正化につながります。
予実管理
予実管理とは、ある一定の期間で予算管理とその情報を経営に活かすためのものです。一定期間ごとに予算と実績を比較すると、けいけくの進捗状況を確認することができるため、成績が思わしくない部署については改善やテコ入れを行うなどの管理をすることができます。
こういったテコ入れや管理を行うことで、今後の施策に反映するなどの行動につながります。
資金繰り管理
資金繰り管理は、日々の入出金を管理することによって現金の流れを把握し、資金の過不足を調整することで経営を正常化させることを目的としています。財務状況の現状を把握し、運転資金の状況を把握することで、将来が予測できるようになります。
経営をしていると、損益計算書上では利益が上がっていても、キャッシュフロー計算書では収入になっていないため、「黒字でもキャッシュが足りない」ということが起こります。それらを防ぐことが、資金繰り管理の目的です。
経営分析
経営分析は業績を分析して評価することであり、管理会計は最も重要です。経営分析においては、「収益性」と「安全性」を見極めることが最低限のポイントですが、自社がどのくらい成長しているのか、現在の資本はどのくらいかを分析しておきましょう。
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制度会計とは
では、次に「制度会計」を解説します。制度会計は、管理会計と違い法律が関わってくることがあるため、目的や役割だけでなく法律に関する部分も理解しておきましょう。
制度会計の目的と必要性
制度会計とは、株主や銀行、税務署などに提出する決算書を作成するためのものです。また、「国や地方公共団体が公平に税金を徴収する」という目的もあります。そのため、制度会計は、法制度(会社法、金融商品取引法など)に基づくものであり、一定のルールによって客観性のある財務諸表を作ることになります。貸借対照表、損益計算書などは、この「制度会計」によって作成されると考えましょう。
さらに、制度会計によって作られた財務諸表は、客観的な企業情報として扱われるため、債権者や顧客、取引企業をはじめとした外部の利害関係者が自社を評価するためのデータとなります。
「企業会計原則」に基づいて作る
制度会計は、「企業会計原則」に基づいて作成されます。企業会計原則とは、企業会計の実務を行う上で、一般的に公正妥当と認められたルールを要約することで、財務諸表が適正かどうかを判断するための基準です。
「企業会計原則」は、次の7つがあります。
- 真実性の原則:真実を報告し、提供しなければならない。
- 正規の簿記の原則:正確に会計帳簿を作成しなければならない。
- 資本取引・損益取引区分の原則:資本剰余金、利益剰余金は区別しなければならない。
- 明瞭性の原則:会計事実は明瞭に表示しなければならない。
- 継続性の原則:会計方針は継続して適用しなければならない。
- 保守主義の原則:会計を保守的に行い、企業の健全性を高めなければならない。
- 単一性の原則:どのような目的で財務諸表を作成する場合も、会計記録は単一にし、それに基づいて作成しなければならない。
制度会計に関連する法律
前述の通り、制度会計は法律に基づいて作成します。今回は、「金融商品取引法」「会社法」「法人税法」について解説します。
①金融商品取引法
金融商品取引法は、投資家の保護を目的として、投資判断に必要な経営成績や財政状態の開示などについて規定しています。この法律では、株式を公開している株式会社や大会社(一定額以上の有価証券を発行・募集する株式会社)を対象として、会社法の書類とは別に「有価証券報告書」や「有価証券届出書」を作成して内閣総理大臣に提出しなければならないことが定められています。
②法人税法
法人税法は、税法の規定に基づいて法人の課税所得の算定の仕方を規定しています。計算書類によって確定した決算を元にして、税法特有の調整を行います。
③会社法
会社法は、株主や債権者保護を目的として配当可能利益の算定について規定されています。全ての会社を対象として、営業上の財産や損益の状況を明らかにするため、決算期ごとに計算書類の作成が決まっています。
管理会計と制度会計の違い
ここまで、「管理会計」と「制度会計」の概要や関連する法律などを解説しました。それぞれを理解できたところで、二つの会計の違いを確認しておきましょう。
ルールの違い
まず、ルールに違いがあります。制度会計は、金融商品取引法、会社法、税法などの法律によってルールが定められているのに対して、管理会計は自由なフォーマットや内容で管理を行うことができます。さらに、制度会計は必ず行うものですが、管理会計はやるかどうかすらも自由に決められます。
外部向けか社内向けか
そして、それぞれが「社外」に向いているものか「社内」に向いているものかどうかで分かれます。制度会計は「外部向け」のものであり、企業関係者に経営状況を報告するための客観的情報として扱うものです。それに対して、管理会計は自社の経営管理やマネジメントのために活用するものです。
過去か未来か
最後に、それぞれの会計手法が「過去」か「未来」のどちらかをフォーカスしているかどうかに違いがあります。制度会計は、過去の経営状況を公正かつ客観的に報告することを目的としていますが、管理会計は未来のマネジメントや業績アップが目的です。これらも、大きな違いと言えるでしょう。
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会計に強い人材として活躍する場を広げよう
今回は、「管理会計」と「制度会計」の違いについて解説しました。部署異動や業務の配置転換をはじめとして、様々なきっかけで会計業務に携わる際、これらの「会計手法」を理解しておくことは重要です。本記事を知識を身につけるきっかけとして、さらに深く理解していきましょう。
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